マウスピース矯正のインビザライン治療では、歯を削る処置が行われることがありますが、その理由や必要性、安全性について正しく理解することが大切です。インビザライン治療で歯を削る理由や方法、リスクについてご説明します。
インビザラインとは?基本的な特徴と治療の流れ
インビザラインは、透明なマウスピース型矯正装置を使用して歯並びを整える矯正治療の一つです。ワイヤーやブラケットを使用せず、目立ちにくいため、多くの患者さんに選ばれています。
インビザラインの特徴
透明で目立ちにくい
インビザラインのマウスピースは透明な素材で作られており、装着していても目立ちません。
取り外しが可能
食事や歯磨きの際に取り外せるため、普段の生活がしやすくなります。
痛みが少ない
一度に大きく歯を動かすのではなく、少しずつ移動させるため、痛みが軽減されることが多いです。
金属アレルギーの心配がない
金属を使用しないため、金属アレルギーの患者さんでも安心して治療を受けられます。
インビザライン治療の流れ
1. カウンセリング・診察
患者さんのお悩みをお聞きし、患者さんのお口の中の状態を確認します。この段階で、インビザラインでの治療に向かないケースは、代替え案をご説明します。
2. iTeroでのデジタルスキャン
お口の中をiTeroという3Dスキャナーで撮影し、そのデータを専用ソフトに読み込ませ、歯の動きをシミュレーションしながら最適な治療計画を立てます。
抜歯の必要の有無や、前歯の側面を削るIPRが必要かどうか、アタッチメントの位置、ゴムで歯を引っ張るなどの追加の処置が必要かなども決定します。
3. マウスピースの作成
3Dデータをもとに、患者さん専用のマウスピースを作製します。マウスピースの製造には3週間程度かかりますので、初診相談から実際にマウスピースが患者さんのお手元に届くまでには、2ヶ月程度かかります。
4. 治療の開始
インビザラインは1枚のアライナーで歯を0.25mm程度動かすように設計されています。そのため1ヶ月では1mm程度の移動となり、一ヶ月目は歯の動きがあまり実感できない場合が多いです。
アライナーは1週間~10日程度で新しいものに交換します。10日ほどかけて新しいアライナーに歯がぴったり合うように動かしていきます。
インビザラインで歯を削ることはある?
インビザライン治療では、歯を削るケースがあります。これは、すべての患者さんに行われるわけではありませんが、歯を移動させるためのスペースを確保するために、歯の側面を削るIPRと呼ばれる処置が行われることがあります。
IPR(隣接面削合)とは?
歯の側面のエナメル質をわずかに削る
インビザラインでは、歯の隙間が足りない場合に歯の側面を0.1mm~0.5mm程度削ることがあります。エナメル質の表面を少し削るだけですので、通常は痛みが出ることはありません。
歯を適切に移動させるためのスペースを確保する
歯をきれいに並べるためにはスペースが必要です。そのため、隙間を作る目的でエナメル質を少し削ることがあります。
審美的な仕上がりのための調整
歯の形や位置を美しく整えるために、わずかに削って調整する場合があります。
歯を削る理由とは?
歯を削る理由はいくつかあり、患者さんの歯の状態や治療計画によって異なります。
主な理由
歯のスペースを確保するため
歯が重なり合っている場合や、不正咬合がある場合に、歯の移動スペースを作る必要があります。
歯並びのバランスを整えるため
左右の歯並びのバランスをとるために、わずかに削ることがあります。
噛み合わせの調整
上下の歯が適切に噛み合うように、歯の形を調整することがあります。
歯の形を整えるため
長さが不均一な歯や尖った歯を調整し、より美しい仕上がりにする目的で削ることがあります。
矯正の効率を上げるため
歯をスムーズに動かせるようにするために、わずかに削ることで治療が進みやすくなります。
歯を削る処置は、矯正治療をスムーズに進めるための重要なステップの一つです。歯が重なり合っている場合や、噛み合わせの調整が必要な場合に、適切なスペースを確保することで、より理想的な歯並びを実現できます。
また、見た目の美しさや治療の効率を向上させる効果も期待できます。歯を削る処置が必要かどうかは、患者さんの歯の状態によって異なるため、歯科医とよく相談しながら治療を進めることが大切です。
歯を削る方法とその安全性
インビザライン治療で歯を削る際には、安全な方法が採用されています。
歯を削る方法
専用のヤスリや器具を使用
ダイヤモンドディスクやヤスリを使い、エナメル質をわずかに削ります。
痛みを感じにくい
表面のエナメル質のみを削るため、痛みを感じることはほとんどありません。
削る量は最小限
必要な分だけ削り、歯の健康を損なわないように配慮されます。
これらの方法により、歯を削る処置は最小限の負担で行われます。痛みがほとんどなく、適切な処置を受ければ歯の健康を保ちながら矯正治療を進めることができます。
歯を削ることによるリスクと注意点
歯を削る処置にはメリットがある一方で、注意すべき点もあります。
リスク
削りすぎると歯がしみる可能性がある
削る量が多すぎると、歯の表面が敏感になることがあります。
歯の耐久性が低下する可能性
エナメル質を削るため、極端に削ると歯が弱くなることがあります。
適切な管理が必要
削った部分に歯垢が溜まりやすくなるため、歯磨きを丁寧に行うことが大切です。
歯を削ることで治療の効果を最大限に引き出せますが、リスクも伴います。適切な処置と日常的なケアをしっかり行うことで、歯の健康を維持しながら矯正治療を進めることが可能になります。
歯を削らないケースもある?
すべてのインビザライン治療で歯を削るわけではありません。歯を削らなくても矯正が可能な場合もあります。
歯を削らないケース
歯のスペースが十分にある場合
もともと歯並びに余裕がある場合は削る必要がありません。
抜歯によるスペース確保が可能な場合
インビザライン治療前に抜歯を行い、スペースを作る場合もあります。
歯を遠心移動させていくケース
インビザラインは歯を喉側に動かしていくのが得意です。これには親知らずがない場合など、一定の条件がありますが、ガタガタや出っ歯などを整えていくためのスペースを作ることが出来ます。
歯の移動範囲が少ない場合
軽度の歯並び調整で済む場合は、削らずに矯正することが可能です。
歯を削らなくても矯正が可能な場合があります。特にスペースに余裕がある場合や抜歯を行う場合は、削る必要がないため、歯の健康をより保ちやすくなります。
まとめ
インビザライン治療では、必要に応じて歯を削ることがあります。IPRは安全に行われる処置であり、スペースの確保や歯並びのバランスを整えるために行われます。
重要なポイント
- インビザライン治療では、必要に応じて歯を削ることがある。
- 削る量は最小限で、痛みを伴わない。
- 削ることでスペースを確保し、より良い矯正結果を得る。
- 削らなくても矯正が可能なケースもある。
歯を削ることは、スペースを作るために必要な処置の一つで、矯正治療を成功させるための手段です。しかし、すべてのケースで必要なわけではなく、適切な診断と計画のもとで行われることが大切です。