インプラント

インプラント治療の失敗例とその予防法

インプラント治療の失敗例とその予防法

インプラント治療は、見た目も自然で、しっかり噛める――そんな理想的な治療法として、多くの方に選ばれています。
でも一方で、「失敗したらどうしよう…」「本当に大丈夫なのかな?」と、不安を感じておられる方も少なくありません。

実は、私たち歯科医師のもとにも、インプラントに関してのご相談の中で、
「失敗例ってあるんですか?」「もしトラブルになったらどうすれば…」という声がよく寄せられます。

ご安心下さいね。
確かに、インプラント治療にはごく稀に「失敗」と言える結果が起こることもあります。
しかし、その多くは事前にしっかりと情報を得て、対策を講じることで、 十分に回避することができる ものなのです。

この記事では、そんな不安を抱える患者さんのために、
実際に起こりうる失敗例やその原因、そして失敗を防ぐためのポイント をわかりやすくご説明します。

これからインプラント治療を受けようと考えている方、現在治療中の方、
どちらの方にも「読んでおいてよかった」と思っていただける内容を目指しました。
ぜひ最後までお読みいただき、ご自身の判断に役立ててくださいね。

インプラント治療における失敗とは?

インプラント

インプラント治療は、高い成功率を誇る治療法ですが、100%成功するとは限りません。「失敗」というと大きなトラブルを想像するかもしれませんが、実際には以下のようなケースが含まれます。

  • インプラントが定着せず、脱落する
  • 治療後に痛みや腫れが長期間続く
  • 咬み合わせの不具合が生じる
  • 周囲の歯茎が痩せてしまう
  • 感染症(インプラント周囲炎)を発症する

こうした失敗を防ぐには、 原因を知り、適切な対策を講じることが重要 です。

インプラント治療の代表的な失敗例

インプラント治療には、さまざまな失敗例が報告されています。特に以下のようなケースが多く見られます。

1. 骨の状態が足りないと固定できない

インプラントは顎の骨にしっかり固定するのが基本です。
でも、骨が少なかったり、痩せていたりすると、ぐらついてしまうことも。

  • 手術後にインプラントがしっかりと骨に固定されず、数カ月後に脱落するケース。
  • 骨の量が不足していたり、インプラントのサイズが適切でない場合に起こる。

どうして骨が足りなくなるの?

  1. 昔、歯周病だった → 歯周病で骨が溶けている場合が多いです。
  2. 歯が抜けたまま放置 →そのままだと骨が痩せていきます。
  3. もともと骨が薄い体質 → 生まれつき骨量が少ない方もいます。

骨が少ないと感じたら、「骨を増やす治療」で対処できます!

2. インプラント周囲炎(感染症)

  • 歯垢(プラーク)が溜まり、歯周病のような症状が発生。
  • 適切な歯磨きを行わないと、細菌が増殖し、炎症を引き起こす。
  • 最悪の場合、インプラントが抜け落ちることも。

3. 咬み合わせの不具合

  • インプラントが他の歯と噛み合わない場合、違和感や顎関節症の原因になる。
  • 咬み合わせが悪いと、インプラントや周囲の歯に過度な負担がかかる。

4. 神経や血管の損傷

  • 手術中に神経を傷つけてしまうと、長期間のしびれや痛みが続く可能性がある。
  • 適切なCT診断を行わずに施術した場合に起こりやすい。

これらの失敗を防ぐには、事前の診断や術後のケアが非常に重要です。

なぜインプラントが失敗するのか?主な原因を解説

インプラント

インプラント治療は、正しく行えば非常に高い成功率を誇ります。しかし、いくつかの要因が重なると失敗のリスクが高まることも事実です。ここでは、 インプラント治療が失敗してしまう主な原因についてご説明します。

1. 骨の状態が不十分

インプラントは、顎の骨にしっかりと埋め込むことで安定し、長期間にわたって機能します。しかし、 骨の量が足りない場合 や 骨密度が低い場合 には、インプラントがうまく固定されず、最悪の場合、脱落してしまうことがあります。

骨が不足する原因

もともと骨が薄い方 → 生まれつき顎の骨が薄い場合、インプラントを支えるための十分な土台がありません。

歯周病による骨の吸収 → 過去に 重度の歯周病 を患ったことがある患者さんは、 顎の骨が溶けてしまっていることが多い ため、インプラントがしっかりと固定できない可能性があります。

長期間、歯が抜けたままだった → 歯を失ったまま放置すると、 顎の骨が徐々に吸収され、痩せていきます。その結果、インプラントの埋入に必要な骨の量が不足してしまいます。

対策

  • 骨が不足している場合、骨造成(GBR法・サイナスリフトなど)を行う。
  • CT撮影を行い、骨の状態を事前にしっかり確認する。
  • 歯周病がある場合は、まず歯周病治療を行ってからインプラント手術を検討する。

骨がしっかりしていない状態で無理にインプラントを埋め込むと、 初期固定が不十分となり、最終的に脱落してしまうリスクが高まります。したがって、 骨の状態をしっかりと診断し、必要に応じて骨造成を行うことが重要 です。

2. メンテナンス不足で炎症が起こる

インプラントもケアしないとトラブルに。
特に「インプラント周囲炎」は注意が必要です。

どうして炎症になるの?

  • 歯磨きが甘い → 歯垢が溜まって炎症の原因に。

  • 定期健診をサボる → 早期発見のチャンスを逃しちゃいます。
  • 噛みしめ・歯ぎしり → 意外とインプラントに負担がかかってます。

インプラントも毎日のケア+定期メンテナンスが命です!

インプラント周囲炎とは?

  • 歯垢(プラーク)が原因で発生する感染症で、インプラント周囲の歯茎や骨が炎症を起こす病気。
  • 進行すると、骨が溶け、インプラントがぐらつき、最終的に抜け落ちる可能性がある。
  • 天然歯の歯周病と似ているが、インプラント周囲炎は進行が早く、治療が難しい場合が多い。

メンテナンス不足による問題点

歯磨きを怠ると、細菌が繁殖しやすくなる。

定期的な歯科医院でのクリーニングを受けないと、初期の炎症を見逃してしまう。

歯ぎしりや食いしばりによる負担が、インプラントの寿命を縮める。

対策

毎日の丁寧な歯磨きを徹底する(特にインプラントの周囲は丁寧にケア)。

定期的に歯科医院でプロフェッショナルクリーニングを受ける(3~6カ月ごと)。

咬み合わせや歯ぎしりの有無を定期的にチェックし、ナイトガード(マウスピース)を使用する。

インプラントは 一度埋め込んだからといって、一生メンテナンスなしで問題ないわけではありません。正しいメンテナンスを怠ると、せっかくのインプラントが短期間でダメになってしまうリスクがある ため、 治療後のケアも非常に重要 です。

3. 手術がうまくないとズレることも

インプラントの手術はとても繊細。
経験の浅い歯科医だと、ミスが起こることもあります。

どんな失敗があるの?

埋める場所がズレてる → 噛み合わせが変になることも。

神経に当たる → しびれや痛みが続く原因に…。

骨の準備が不十分 → ちゃんと処置しないとグラつきます。

技術不足による失敗例

インプラントが適切な位置に埋め込まれていない → 角度や深さが不適切だと、 咬み合わせの不具合や、周囲の歯への負担が増加 する。

神経や血管を傷つけてしまう → CT撮影や術前のシミュレーションが不十分だと、 神経を損傷し、しびれや痛みが長期間続く 可能性がある。

適切な骨の処置がされていない → 骨が足りない場合に適切な骨造成を行わないと、 インプラントが定着せず、すぐに脱落してしまう ことがある。

対策

  • CTスキャンを活用し、正確な位置に埋入するためのシミュレーションを行う。
  • 経験豊富な歯科医師を選び、過去の症例実績を確認する。
  • 手術前にしっかりとカウンセリングを受け、不安や疑問を解消する。

技術不足による失敗は、患者さんの体に大きな負担をかけるだけでなく、再治療のコストや期間も増えてしまいます。そのため、 経験豊富な医師を選び、適切な設備の整った歯科医院で治療を受けることが大切 です。

医院選びは大事!CTやシミュレーション設備のあるところを選ぼう。

4. 喫煙・糖尿病など体の状態の影響も大きい

生活習慣もインプラントの成功に関係あります。

リスクになるものって?

タバコ:血流が悪くなって、治りが遅くなる。

糖尿病:傷が治りにくく、感染しやすい。

体の免疫力が低下してる時:トラブルが起きやすいです。

心配な人は、事前に歯医者さんとしっかり相談しておきましょう!

喫煙の影響

  • 血流が悪くなることで、インプラントと骨の結合が妨げられる。
  • 歯茎の免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなる。
  • インプラント周囲炎のリスクが高まり、治療後の予後が悪くなる。

糖尿病の影響

  • 血糖値が高いと、傷の治りが遅くなり、手術後の感染リスクが高まる。
  • 歯周病になりやすいため、インプラント周囲炎を引き起こしやすい。
  • 血流が悪くなることで、インプラントの定着が不十分になることがある。

対策

  • 喫煙している場合は、インプラント手術の数カ月前から禁煙を開始する。
  • 糖尿病の方は、事前に主治医と相談し、血糖コントロールをしっかり行う。
  • 手術後は特に口腔内のケアを徹底し、感染症を防ぐようにする。

このように、インプラントの失敗にはいくつかの「理由」があります。
でも、どれも「予防できる」ことがほとんどなんです。
失敗を避けるには、正しい知識×ちゃんとしたケアが何より大切なんですね。

インプラントの失敗、どう防ぐ?

「失敗するって言われても…じゃあ何を気をつければいいの?」
そんな疑問を持ったあなたへ。
ここでは、インプラントで後悔しないために、今できる4つの対策を紹介します!

1. 信頼できる歯医者さんを選ぼう

正直ココ、めちゃ大事です。
経験不足の医院だと、ズレた場所に入れられたり…なんてことも。

チェックポイント

インプラントの実績、ちゃんとある?

CT撮影や3Dシミュレーションしてくれる?

質問にちゃんと答えてくれる雰囲気ある?

「説明が丁寧なところ」は安心感も◎!

2. 事前の検査、スルーしないで!

インプラントが成功するかどうかは、始める前に決まってるって言っても過言じゃないかも。

やることはこんな感じ

顎の骨の量、CTでしっかりチェック!

持病とか生活習慣も含めて、全身の健康状態を確認。

「骨が足りないなら増やす治療」もあるから、検査って超大事!

3. 手術の後こそ、気を抜かないで!

「終わった〜!」で気を抜いちゃうと、トラブルが始まるのはその後かも。

術後のセルフケア:

歯磨きは1日2回以上、丁寧に!(特にインプラントのまわり)

定期的にメンテに通おう(できれば3〜6ヶ月に1回)

喫煙してる人は…できればこのタイミングでやめておこう

ケアを頑張る人ほど、インプラントは長持ちします!

4. 咬み合わせ、違和感あったらすぐ相談!

「なんか噛みにくいな〜」と思ったまま放置すると、
インプラントだけじゃなくて他の歯にも負担がかかることに。

こんなときはすぐ連絡を

噛んだときに痛い・ズレてる気がする

顎が疲れやすい、音が鳴る気がする

「様子見」はNG。ちょっとでも気になったら歯科へGO!

これらのポイントを意識することで、インプラントの失敗リスクを大幅に下げることができます。

もし失敗してしまったら?再治療の選択肢

万が一、インプラントが失敗してしまった場合、どのような対策があるのでしょうか?

1. 再手術を行う

  • 骨が十分にある場合は、再度インプラントを埋め込むことが可能。
  • ただし、感染がある場合はしっかりと治療してから再手術が必要。

2. 骨を増やす処置(骨造成)

  • 骨が不足している場合、骨移植や骨造成(GBR法)を行う。
  • これにより、インプラントがしっかりと固定されるようになる。

3. 別の治療法を検討する

  • ブリッジや入れ歯など、他の方法を考えることも選択肢。
  • インプラントが難しい場合でも、適切な代替手段を歯科医と相談。

学会への報告例

歯科インプラントの失敗例について、学会で報告されたケースを調査しました。

1. 日本口腔インプラント学会(JSOI)

報告例: インプラント周囲炎の発生と対策

  • 発表者・・複数の歯科医師による報告
  • 概要
    • インプラント周囲炎の発生率とリスク要因についての研究
    • 喫煙や糖尿病が発症リスクを高めることを報告
    • メンテナンス不足が失敗の主要因であることを指摘

2. 日本補綴歯科学会(JPS)

報告例: インプラントの破折に関する症例報告

  • 発表者: 某大学歯学部の研究グループ
  • 概要:
    • インプラント体の破折が発生する主な要因(咬合力の過負荷、材料の欠陥)
    • チタン合金とジルコニアの破折率比較
    • 咬合調整の重要性についての提言
<h3″>3. 国際口腔インプラント学会(ICOI: International Congress of Oral Implantologists)

報告例: 神経損傷のリスクと回避策

  • 発表者: 国際的な研究グループ
  • 概要:
    • 下顎神経損傷の報告事例とその影響
    • 事前のCTスキャンとデジタルプランニングの必要性
    • 神経損傷リスクを低減するための埋入方法

4. 欧州インプラント学会(EAO: European Association for Osseointegration)

報告例: 上顎洞へのインプラント迷入

  • 発表者: 欧州の研究機関
  • 概要:
    • 上顎洞への迷入(インプラントが副鼻腔へ逸脱)事例の報告
    • 予防策としてのサイナスリフトの有効性
    • インプラントの長さと埋入位置の調整の重要性

まとめ

インプラント治療は成功率の高い治療法ですが、 失敗のリスク もゼロではありません。そのためには、 適切な医院選び・事前検査・術後のメンテナンス が重要です。

失敗を防ぐためのポイント

  • 経験豊富な歯科医院を選ぶ
  • 術前の検査をしっかり受ける
  • 歯磨きと定期健診を怠らない
  • 喫煙や全身疾患に注意する

これらを守れば、 インプラントを長く快適に使用することができます。
「インプラントは失敗するのでは?」と不安に思われる方も、 正しい知識を持つことで安心して治療を受けることができるでしょう。

この記事の監修者

医療法人真摯会
西宮クローバー歯科・矯正歯科 院長
廣石 勝也
朝日大学歯学部卒業。大阪歯科大学総合診療科臨床研修終了。国際口腔インプラント学会会員。

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