歯と口のトラブル

歯ぎしりがもたらす悪影響とは?

歯ぎしりがもたらす悪影響とは?

歯ぎしりは、無意識のうちに歯を強く噛み締めてギリギリと音が出るほど擦る動作で、特に就寝中に起こりやすく、気づかないうちに歯や顎に負担をかけてしまうことが多くあります。歯ぎしりがもたらす悪影響や予防法についてご説明します。

歯ぎしりとは?そのメカニズムと原因

歯ぎしり

歯ぎしりは、無意識のうちに上下の歯を強く噛み合わせ、擦り合わせる動作を指します。特に睡眠中に多く発生し、気づかないまま進行することが多いです。主な原因は以下の通りです。

  • ストレス・・精神的なストレスが原因で、筋肉が緊張し歯ぎしりを引き起こす。
  • 噛み合わせの不調・・歯の噛み合わせが悪い場合、顎の位置がずれ、歯ぎしりが誘発されやすくなる。
  • 生活習慣・・アルコールやカフェインの摂取、喫煙などが歯ぎしりを助長する場合がある。
  • 遺伝的要因・・歯ぎしりは家族に遺伝する可能性があるとも言われています。

歯ぎしりの種類

歯ぎしりの種類

歯ぎしりの口腔への悪影響

奥歯

歯ぎしりは、知らないうちに歯や顎に大きな負担をかけ、口腔内に様々な悪影響を及ぼします。

1. 歯の摩耗

歯ぎしりが続くと、歯の表面が擦り減り、エナメル質が徐々に削れていきます。エナメル質は歯を保護する役割を持っているため、削れた部分がむき出しになることで、歯の内部にある象牙質が露出し、知覚過敏の症状が現れます。

その結果、冷たい飲み物や甘いものを摂取する際に強い痛みを感じることがあります。さらに、摩耗が進行すると、歯自体が短くなり、噛み合わせのバランスも崩れてしまいます。

2. 詰め物や被せ物の破損

歯ぎしりは詰め物や被せ物にも大きな影響を与えます。歯にかかる圧力が強くなると、詰め物が外れたり、被せ物が破損する可能性が高まります。

特にセラミックのような硬い素材でも、長期間にわたる圧力には耐えきれず、ひび割れや破損が生じることがあります。このような状況が続くと、再治療が必要になり、歯科的な負担も増えてしまいます。

3. 歯列矯正中の悪影響

歯列矯正治療中の患者が歯ぎしりをしてしまうと、矯正力に悪影響を及ぼします。歯が計画的に移動するためには、一定の力がかかる必要がありますが、歯ぎしりによる過度な力が加わると、矯正器具やワイヤーが外れたり、壊れてしまうなど、治療計画が遅れる場合があります。特に、歯列矯正が進行中の段階では、歯ぎしりによって歯の移動が不均等になるリスクも考えられます。

4. 顎関節への負担

歯ぎしりによって最も影響を受けるのが顎関節です。顎の関節や筋肉に過度の負担がかかることで、顎関節症(TMD)が引き起こされることがあります。具体的には、顎を動かした際に痛みや違和感を感じることや、口を開ける際に「カクカク」と音がする症状が現れることがあります。これが慢性化すると、食事や会話の際に支障をきたす場合もあり、生活の質に悪影響を及ぼします。

5. 歯周病の進行

歯ぎしりは、歯周病の進行を加速させる要因にもなります。歯ぎしりによって歯の周りの組織に過度な力がかかることで、歯茎がダメージを受け、歯周病が悪化するリスクが高まります。

特に、歯周病の初期段階では、歯ぎしりによる刺激が歯茎の炎症を悪化させ、歯を支える骨(歯槽骨)が徐々に破壊されてしまう可能性があります。歯周病が進行すると、最終的には歯がぐらつき、抜けてしまうこともあるため、早期の対策が重要です。

6. 歯の破折や脱臼

歯ぎしりは非常に強い力を伴うため、場合によっては歯が割れたり、欠けたりすることがあります。この状態を歯の破折といい、破損の程度によっては抜歯が必要になるケースもあります。特に、奥歯や詰め物が入っている歯は、強い力を受けることで破折しやすくなります。また、極端な場合には、歯が部分的に脱臼することも考えられます。

このように、歯ぎしりは口腔内にさまざまな悪影響を及ぼし、長期にわたって放置することで深刻な問題に発展する可能性があります。

歯ぎしりが全身に及ぼす影響とは?

歯ぎしりは、口腔内だけでなく全身に悪影響を及ぼすことがあります。

  • 頭痛・・歯ぎしりによって顔や頭部の筋肉に緊張が生じ、慢性的な頭痛が引き起こされることが多いです。
  • 首や肩のこり・・筋肉の緊張が首や肩にまで及び、こりや痛みを感じることがある。
  • 睡眠の質の低下・・歯ぎしりによって熟睡できず、睡眠の質が低下することで日中の疲労感や集中力の低下を招く。

歯ぎしりが原因で引き起こされる疾患

歯ぎしり

歯ぎしりは、次のような疾患を引き起こすリスクがあります。

  • 顎関節症・・歯を強い力で擦り合わせることで顎関節に負担がかかり、顎関節症を引き起こすことがあります。
  • 知覚過敏・・歯のエナメル質が削れることで、冷たいものや甘いものに対して強い痛みを感じることがある。
  • 歯周病・・歯に強い力がかかるため歯周組織に負担がかかり、歯茎の健康が損なわれることがあります。
  • 歯の破折・・過度な力が歯にかかり、歯が割れたり欠けたりすることがある。

予防法と対策

ナイトガード

歯ぎしりの悪影響を防ぐためには、予防と対策が重要です。以下の方法が効果的です。

  • マウスピースの使用・・就寝時に専用のマウスピースを装着することで、歯ぎしり自体を治すことは出来ないものの、歯や顎関節への負担を軽減します。
  • ストレス管理・・リラクゼーションや適度な運動を行い、ストレスを減らすことが歯ぎしりの予防につながります。
  • 噛み合わせの調整・・歯科医に相談し、噛み合わせを調整することで症状を緩和できる場合があります。
  • 生活習慣の改善・・アルコールやカフェインの摂取を控え、規則正しい生活を送ることが推奨されます。

治療を早期に行うべき理由

歯ぎしり

歯ぎしりは放置すると、口腔内だけでなく全身にさまざまな悪影響を及ぼします。特に以下の理由から、早期の対策と治療が重要です。

  • 症状の進行を防ぐため・・歯の摩耗や顎関節症などの症状が進行し、治療が難しくなる前に対処することが望ましいです。
  • 快適な生活の維持・・早期に治療することで、頭痛や肩こり、睡眠障害などの全身症状を軽減し、生活の質を向上させることができます。
  • 長期的な健康を守るため・・歯ぎしりが原因で引き起こされる疾患を防ぐことで、口腔内外の健康を維持することが可能です。

まとめ

歯ぎしりは口腔内だけでなく、全身に悪影響を及ぼす可能性があります。放置することで歯の摩耗や顎関節症、さらには頭痛や肩こりといった全身の不調を引き起こすリスクが高まります。早期の予防と対策を行うことで、これらの症状を防ぎ、健康な生活を送ることができます。

この記事の監修者

医療法人真摯会
西宮クローバー歯科・矯正歯科 院長
廣石 勝也
朝日大学歯学部卒業。大阪歯科大学総合診療科臨床研修終了。国際口腔インプラント学会会員。

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