矯正歯科

歯並びが悪いままだとリスクがあるの?

歯並びが悪いままだとリスクがあるの?

歯並びが悪い状態を不正咬合といいます。不正咬合は見た目の問題だけでなく、健康や生活の質にも影響を及ぼします。歯並びが悪いことによるリスクやその原因、改善方法についてご説明します。

不正咬合とは?

不正咬合とは、歯が正常な位置に並んでおらず、噛み合わせに問題がある状態を指します。具体的には、歯が重なり合っていたり、前後左右にずれていたりする状態です。このような状態は、見た目の問題だけでなく、お口の健康や全身の健康にも影響を及ぼします。

歯並びが悪いことによる主なリスク

虫歯や歯周病のリスク増加

歯並びが悪いと、歯と歯の間に歯ブラシが届きにくくなり、歯垢が溜まりやすくなります。その結果、虫歯や歯周病のリスクが高まります。特に、歯が重なり合っている部分は汚れがたまりやすく細菌が繁殖しやすい環境となります。

咀嚼機能の低下と消化不良

不正咬合があると食べ物を噛み砕くことが難しくなります。その結果、塊のままで飲み込む癖がつき、消化器官に負担がかかり、消化不良や栄養吸収の低下を引き起こす可能性があります。また、しっかりと噛むことができないと満腹感を得にくくなり、過食の原因になる場合もあります。

口臭の原因

歯並びが悪いと、お口の中に汚れがたまりやすくなり、細菌が増殖しやすくなります。これにより、口臭の原因となる揮発性硫黄化合物が生成されやすくなります。さらに、口がしっかり閉じられない場合、口呼吸が習慣化し、お口の中が乾燥して唾液の分泌が減少し、口臭が悪化することがあります。

顔かたちへの影響

不正咬合は、お顔のバランスや輪郭にも影響を及ぼします。例えば、上顎前突(出っ歯)の場合、上唇が突出して見えることがあります。また、下顎前突(受け口)の場合、下顎が前に出て見えます。これらの特徴が目立つ場合、お顔の見た目が気になりコンプレックスに繋がることがあります。

顎関節への負担

噛み合わせが悪いと、顎関節に不均等な力がかかり、顎関節症を引き起こすリスクが高まります。顎関節症の症状としては、顎の痛み、口を開け閉めするときに音がする、口が開きづらくなるなどがあります。これらの症状があると、日常生活に支障が出ることがあります。

発音への影響

歯並びや噛み合わせが悪いと、正しい発音が難しくなることがあります。特に、サ行やタ行、ラ行の発音に影響が出やすく、滑舌が悪くなる原因となります。これにより、コミュニケーションに支障が出ることがあります。

不正咬合の主な原因

遺伝的要因

不正咬合の多くは遺伝的要因によるものです。親から子へと歯の大きさや顎の形が受け継がれ、それが原因で歯並びが悪くなることがあります。例えば、骨格性の出っ歯や受け口は遺伝しやすいといわれます。

生活習慣や癖

指しゃぶりや舌で歯を押す癖、口呼吸などの生活習慣や癖も不正咬合の原因となります。これらの習慣が何年も続くと、歯や顎の発育に影響を及ぼし、歯並びが悪くなることがあります。

特に、幼少期のこれらの習慣は、成長期における顎の発達に大きな影響を与えるため、早めに矯正することが大切です。例えば、以下のような癖が不正咬合を引き起こすことがあります。

  • 指しゃぶりや舌を押し出す癖が続く
  • 長時間の哺乳瓶使用や飲み口付きマグカップの使用
  • 口呼吸の習慣化による口腔内筋肉のバランスの崩れ

これらの要因を取り除くことで、不正咬合の進行を予防できます。

乳歯の早期喪失

乳歯が早期に抜けてしまうと、永久歯が生えるスペースが不足する場合があります。その結果、永久歯が正しい位置に生えず、不正咬合が発生します。特に虫歯による乳歯の喪失は、不正咬合のリスクを高めるため、乳歯のケアも重要です。

歯の数や大きさの異常

歯が通常より多い場合(過剰歯)や少ない場合(欠損歯)、または歯の大きさが極端に異なる場合も、不正咬合の原因となります。過剰歯はスペースの不足を引き起こし、欠損歯は噛み合わせのバランスを崩します。

不正咬合の種類と特徴

不正咬合

叢生(そうせい)

歯が重なり合い、正しく並んでいない状態です。スペース不足や顎が十分な大きさに発育しなかったことが原因で起こります。歯磨きが困難なため、虫歯や歯周病のリスクが高まります。

上顎前突(出っ歯)

上の前歯が前方に突出している状態で、見た目の問題だけでなく、口を閉じることが困難になり口呼吸の原因になる場合があります。顎関節への負担も大きくなります。

下顎前突(受け口)

下の歯が上の歯より前に出ている状態です。噛み合わせが悪く、咀嚼や発音に支障をきたすことがあります。

開咬(オープンバイト)

上下の前歯が噛み合わず、隙間ができている状態です。舌癖や指しゃぶりが原因で発生しやすく、発音や咀嚼に影響が出ます。

交叉咬合(クロスバイト)

上下の歯が逆に噛み合っている状態です。この状態は顎のずれを引き起こし、顔の左右非対称の原因になることがあります。

過蓋咬合(噛み合わせが深い)

上の歯が大きく下の歯にかぶさり、イーっとしたときに、下の歯が殆ど見えない状態です。この状態は顎がずれているために起こり、噛み合わせが悪く、顎関節症を発症しやすいです。歯ぎしりや食いしばりの癖がある方も過蓋咬合になりやすいです。

不正咬合の改善方法

矯正治療

不正咬合を改善する最も効果的な方法は矯正治療です。主な選択肢は以下のような治療法です。

  • ワイヤー矯正・・最も一般的な方法で、細かい調整が可能。複雑な不正咬合も治療可能。
  • マウスピース矯正(例:インビザライン)・・取り外しが出来、食事と歯磨きの時は取り外して行う。見た目を気にせずに治療ができる。
  • 部分矯正・・軽度の不正咬合に適しており、治療期間や費用が抑えられる。

矯正治療は患者さんの年齢や不正咬合の種類に応じて異なるため、歯科医と相談することが重要です。

生活習慣の見直し

不正咬合の進行を防ぐためには、悪い癖や生活習慣を見直すことも重要です。例えば

  • 鼻呼吸を習慣化する
  • 舌の正しい位置を意識する
  • 健康的な食生活を送る

定期的な歯科健診の重要性

不正咬合の早期発見には、定期的な歯科健診が不可欠です。特に子供の健診では、顎の発育状況や歯並びを確認し、必要に応じて予防的な処置を行うことが可能です。

まとめ

歯並びが悪いことは、見た目だけでなく、お口の中や全身の健康にも多くのリスクをもたらします。虫歯や歯周病、消化不良、口臭、顔貌や顎関節への影響など、様々な問題が生じる可能性があります。

不正咬合の原因には遺伝的要因や生活習慣などがあり、改善には矯正治療や生活習慣の見直しが必要です。気になる場合は歯科健診を受け、歯科医と相談しながら適切な対策を行うことで、これらのリスクを最小限に抑えることができます。

この記事の監修者

医療法人真摯会
西宮クローバー歯科・矯正歯科 院長
廣石 勝也
朝日大学歯学部卒業。大阪歯科大学総合診療科臨床研修終了。国際口腔インプラント学会会員。

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