矯正をやらなきゃよかったと後悔したくはありません。歯列矯正を行う前に何を知っておくべきか、どのようなポイントが大事かについて詳しくご紹介いたします。
目次
「矯正なんてやらなきゃよかった」と後悔する理由とは
歯並びの見た目以外に、咀嚼機能や噛み合わせを矯正治療で改善することができます。詳しく調べずに行い、「やらなきゃよかった」と後悔する人もいます。そのような後悔を未然に防ぐために、どんなことで後悔をしたかについて紐解きましょう。
期待した結果が得られなかった
最も起こり得る理由として、歯科医師と患者さんの描くゴールとする歯並びが異なっていたケースです。歯科医師はカウンセリングで治療計画を立てる際に、このような歯並びになりそうというイメージを、患者さんに共有し、しっかりと説明する必要があります。実際に治療開始してからも、歯の動きの状態によっては途中で歯並びのイメージを変更させなければならないことがあります。その際には、歯科医師は患者さんに途中経過などを説明のうえ、ご納得いただかなければなりません。
小顔になりたいからという目的で矯正治療を受ける方がおられます。噛み合わせを改善できたことで顔貌が変化する可能性がありますが、イコール小顔に直結ではないということを認識しておきましょう。
治療中の痛みや不快感があった
ワイヤーやマウスピースの装着による違和感や痛みが想像以上だったという方がおられます。ワイヤー矯正の場合は、1ヶ月に1回はワイヤーを調整します。調整直後の2~3日は痛みがあり、不快に思われる方も多いでしょう。マウスピース矯正でもマウスピース(アライナー)交換直後は歯に圧迫感や違和感を感じることがあります。
費用の負担が大きかった
矯正治療は先天性の疾患で保険適用が認められるケースがまれで、ほとんどは自由診療の対象となり高額な費用がかかります。取り扱っている装置はクリニックによって差があり、費用も異なります。デンタルローンや独自のシステムがあるクリニックは多いですが、費用に見合った結果を得られないと感じれば、後悔が生じます。
歯の表側にブラケットを装着して銀色のワイヤーを通す普通矯正
- 白い歯に銀色のワイヤーが通っているのが見た目でわかる
- 治療中と周囲に知られても気にされない方にとって費用が一番安い
歯の表側にブラケットを装着してホワイトワイヤーを通すホワイトワイヤー矯正
- 白いワイヤーで遠目からは治療中と分かりにくい
- 近くで見ると分かるが裏側矯正(舌側矯正)より安い
歯の裏側にブラケットを装着して銀色のワイヤーを通す裏側矯正
- 表側からブラケットやワイヤーが見えないため、周囲に治療中と知られない
- 患者さんの歯並びに合わせてワイヤーを設計するため、ワイヤー矯正の中で最も費用が高い
マウスピースを装着して交換して歯を動かすインビザライン矯正
- 見た目で分かりにくいマウスピース(アライナー)を患者さん自身で取り外し可能なので、食事や会話を気にせずできる
- 装着時間が短く歯の動きが悪い場合、最初にマウスピースを設計するため、再度費用が掛かる場合がある
治療期間が長くかかった
矯正治療には適度な矯正力をかけながら歯を動かしていきます。歯を動かすには時間が掛かり、正しい位置に動いた後、歯を固定するにも時間がかかります。部分矯正でなく全顎矯正である場合、数年かかることが多く、その期間の長さにストレスを感じる人もいます。
矯正後にリテーナーを怠り後戻りした
歯を動かした動的治療の後は、歯を固定する静的治療を行う必要があります。静的治療には、歯を正しい位置に固定するための保定装置(リテーナー)を使用します。つい面倒になってリテーナーを怠ると、歯並びが元に戻ってしまう後戻りが起きて再度の治療が必要になることがあります。
矯正治療で後悔しないための事前確認ポイント
これらの後悔を防ぐには、治療前の十分な準備と治療中の注意が必要です。特に、以下のポイントを確認しておきましょう。
1.歯科医師の実績や信頼がおけるか
歯科医師についてさまざまな矯正治療の実績があるか、もしくは専門的に勉強していた矯正歯科医かどうかを確認しましょう。また、信頼のおける人間性かどうかについてもカウンセリングの際に見る必要があります。
2.治療のゴールを明確にする
歯並びに美しさを求めるのか、それとも咀嚼についての機能性の改善を重視なのか、自分の目標を歯科医師へ伝えましょう。実際に治療計画を立ててもらい、患者さんご自身の希望や目標が現実的に可能かどうかを知ることも大切です。
3.費用についての詳細な説明
費用は決して安い金額ではありません。トータルの費用や分割払いの可否など、事前に費用面を確認しておくことが重要です。メリットばかりではなく、費用やデメリットをきちんと説明してくれる医院でされるほうが安心です。
4.治療期間の目安
自分のライフスタイルに合った治療期間か、通院可能かを確認しましょう。インビザライン矯正を選んだ場合、一日20時間以上装着する必要があります。
- 装着が可能かどうか
- 無理してではなくできるだけ通いやすい場所にあるかどうか
- ご自身のライフスタイルに合う診療時間か
このような点からクリニックを選んでください。
5.リスクと副作用の理解
装置の痛みやリスクについて事前に説明を受け、自分が納得できるかを確認します。疑問や質問があればドクターやスタッフへ相談して、納得してから治療を行わなければ後悔します。
矯正の種類と自分に合った方法を選ぶためには
矯正治療の種類を知り、患者さん自身に合う治療を選ばなければなりません。
矯正治療の種類
先程もご紹介しましたが、大きく分けてワイヤー矯正とマウスピース矯正があります。
ワイヤー矯正
金属製またはセラミック製のブラケットを歯に装着し、ワイヤーで歯を動かす方法で、このような幅広い症例に対応が可能です。
- 歯を横に並行して動かしていく歯体移動
- 前後左右に倒れている歯を起こす傾斜移動
- ねじれている歯を正しい向きへ戻す捻転(ねんてん)
- 高さが低い歯を舌側へ引っ張り出す挺出(ていしゅつ)
- 歯の高さを歯肉側に下げる圧下(あっか)
患者さん自身で器具を取り外すことが出来ないため、器具と歯の間を清掃することが大変です。
マウスピース矯正(インビザラインなど)
透明で目立たないマウスピースを使用する方法で、装置が取り外し可能であり、食事や歯磨きがしやすいのが特徴です。挺出や圧下などの歯を引っ張り出したり沈める働きは重度である場合はワイヤー矯正と併用する可能性があります。捻転については、アタッチメントという突起を付ければ丸い歯に引っかかりが出来るため、矯正力をかけることができます。
矯正治療の範囲
矯正治療も部分的に行うか、上下全体で行うかで大きく変わります。
部分矯正
前歯や目立つ部分のみを矯正する方法となるため、治療期間が短く、費用も全顎矯正に比べて安くすることができます。
- 周囲に気づかれても構わないのか、見た目で気付かれたくないのか
- 費用が高くても歯並び全体を綺麗にしたいのか、前歯のみで構わないのか
このように色々とポイントを絞っていくと、患者さんご自身の選択の基準が見えてきます。
矯正治療中に意識すべきポイント
矯正治療開始後の日常の過ごし方において、後悔しないための治療中の注意点をいくつか挙げます。
歯磨きを丁寧に行う
矯正装置が付いているとどうしても歯垢や食べかすが溜まりやすくなります。就寝前は特に歯間ブラシやデンタルフロスを活用しましょう。
食事に気をつける
お煎餅のような固い食べ物や、お餅やキャラメルなどの粘着性のある食品は避けるようにして装置を傷つけないように注意しましょう。煮込んだ食べ物やおかゆ、ゼリーやプリンなどの柔らかい食べ物を食べると良いでしょう。
定期的に調整を受ける
指定された通院スケジュールを守り、治療を計画通りに進めましょう。また、歯の動きを確認してもらい、装置の調整や状態を説明してもらうことが大切です。
痛みに対処する
器具の調整後に痛みがある場合は、医師に相談してください。必要に応じて痛み止めを処方してもらったり、市販薬を服用しましょう。
モチベーションを維持する
長期間の治療では、目標を見失わないよう定期的に状態を確認して自分のモチベーションを維持しましょう。
矯正後のリテーナーの重要性
矯正後の歯並びを維持するためには、リテーナー(保定装置)の使用が欠かせません。
リテーナーの役割
矯正後の歯や歯の周りにある歯根膜は動きやすいため、リテーナーで歯を正しい位置に固定します。リテーナーを使わないと、歯根膜が前の歯の位置を記憶しているため、歯が元の位置に戻ろうとする後戻りが起きます。担当医に指定された時間、しっかりと装着して、リテーナーの状態や歯並びの安定を確認するため、定期検診を受けておきましょう。これらのケアを怠ると、せっかく長い期間かけて行った治療が無駄になることもあります。
まとめ
矯正治療は長期間にわたりますが、事前の確認や治療中の意識、治療後のケアをしっかり行うことで、満足のいく結果を得ることができます。しっかりと内容を知ったうえで開始しましょう。