
すきっ歯の治療としてダイレクトボンディングがあります。すきっ歯は治療するべき歯並びなのか、ダイレクトボンディングはどんな人に向いている治療法なのか、放置するとどんなデメリットがあるかなども含めて詳しくご紹介します。
すきっ歯とは?
一般的にすきっ歯と呼ばれる状態は、歯と歯の間にすき間があることです。
- 真ん中の前歯と前歯の間が空いている状態を正中離開
- 他の部分で歯と歯の間が空いている状態を空隙(くうげき)歯列
このように専門的に呼びます。
見た目について
前歯のすきっ歯は、見た目の印象を大きく左右することから、日本人はネガティブな印象をもちやすく、場合によってはコンプレックスになることがあります。ところ変わってフランスでは、すきっ歯はdents de bonheurと言われる幸福の歯だそうです。小さい頃から歯列矯正を行いますが、歯の隙間から幸福が舞い込んでくると言われ、モデルなどでもすきっ歯は治療しないという方が見受けられます。しかし、すきっ歯は見た目だけでなく、機能面でも問題が生じることがあります。
機能について
歯と歯の間が空いていることから機能面でどのような問題が起きるでしょうか。
- 歯と歯の間に食べ物が詰まりやすいことから、虫歯や歯周病にかかりやすくなる
- 歯と歯の間から息が漏れてしまうことから、発音がしにくい
- 歯と歯の間が空いて均一に力がかかりづらく、噛み合わせが悪くなる
- 噛み合わせにくいことから顎関節へ大きく負担がかかる
正常な歯並びよりも隙間が空いていると食べ物が引っ掛かりやすいです。サ行やタ行は舌先を歯の裏へつけて息を出すため、歯と歯の間が空いていると発音が不明瞭に聞こえてしまいます。噛み合わせのバランスが悪いと、上下の前歯でちぎり、奥歯ですりつぶすという役割ができずしっかり噛めないため、消化器官へ大きなまま流れて消化不良となります。また、噛み合わせがしにくいことから、顎関節が無理やり顎を動かそうとし続け、顎関節症になるケースもあります。
すきっ歯になる原因
すきっ歯になる原因を挙げていきます。先天的な原因(歯の本数が少ない・歯のサイズが小さい・顎の広さが大きい)と、後天的な原因があります。
- 歯の本数が少ない
- 歯のサイズが小さい
- 顎の広さが大きい
- 大人になっても上唇小帯(じょうしんしょうたい)が移動しない
- 前歯の裏側を舌で押してしまう
- 歯周病にかかったが放置していた
歯の本数が少ない
永久歯は28本(親知らずが生えると32本)生えますが、永久歯の卵である歯胚(しはい)が何らかの原因で作られないと歯の本数が少なくなります。先天性欠損はおおよそ10人に1人の割合で起きる可能性があります。真ん中から2番目の上顎側切歯、真ん中から5番目の上下の第2小臼歯の部分に起きやすいです。歯の本数は少ないのに顎の大きさが通常通りであれば、すきっ歯になります。
歯のサイズが小さい
乳歯から永久歯へ生え変わった際に、1~2本のみ歯のサイズが小さいという場合があります。専門的に矮小歯(わいしょうし)と呼び、真ん中から2番目の上顎側切歯の部分に起きやすいです。歯のサイズが小さければ、どうしても歯と歯の間に隙間が出来ます。
大人になっても上唇小帯が移動しない
上唇小帯とは、上顎の歯肉の真ん中に存在する筋です。乳幼児期には上唇小帯が太くありますが、顎の成長につれ、上唇小帯は上の方向へ移動します。ただ、永久歯が生えてきてからも歯と歯の間に上唇小帯が入り込むと、その筋が原因ですきっ歯になります。
顎の広さが大きい
顎の骨格がもともと大きいのは遺伝という可能性が高いです。顎が通常より広い場合、歯の大きさが通常通りでもすきっ歯になってしまいます。
前歯の裏側を舌で押してしまう
前歯の裏側を舌でぐいぐい押してしまうとどうしても歯並びは悪化します。舌の癖を舌癖(ぜつへき)と呼びますが、舌の力が前歯にかかることで、歯と歯の間が空き、すきっ歯になってしまいます。
歯周病にかかったが放置していた
歯周病は歯茎に腫れが出て歯磨きの度に出血したり、歯茎が下がり、膿が出る病気です。歯周病を放置すると歯茎下がりになり、歯が抜けてしまい、歯の抜けたスペースへ隣接する歯が移動するということが起きます。
ダイレクトボンディングの治療や特徴
ダイレクトボンディングとは、歯の表面にレジン(樹脂)を直接塗り重ねて形を整え、すきっ歯を埋める治療法です。レジンは歯と同じような色や質感を持つため、自然な仕上がりが期待できます。
ダイレクトボンディングで使うレジンとは?
プラスチック樹脂を主成分としてカルシウムやフッ素などを配合したコンポジットレジンには、ユニバーサルタイプとエステティックタイプの2種類があります。ユニバーサルタイプは歯の修復全般に使用され、色調が豊富であるため自然な歯の色に近づけることができます。一方、エステティックタイプは、前歯の修復によく使用され、透明度が高く自然な見た目に仕上がりやすいです。硬度や透明度も異なりますが、色合いも違うため、審美性を重視する前歯はエステティックタイプ、強度が必要な歯に対してはユニバーサルタイプを目的別に使用します。
ダイレクトボンディングの特徴
- 歯を削る量が少ない、もしくはほぼ削らない
- 短時間(1回)の治療で完了することが多い
- 治療後すぐに日常生活に戻れる
- 他の治療に比べて安価な自費治療である
- 金属を使用しないので体にやさしい
歯を削る量が少ない、もしくはほぼ削らない
健康な状態の歯を削ることは、歯にダメージを与えます。ダイレクトボンディングは歯に盛りつけるため、他の治療に比べてダメージが起きにくいです。痛みが起きる可能性も低いでしょう。
短時間(1回)の治療で完了することが多い
ワイヤーによる矯正、セラミックによる矯正の場合、程度によりますが、定期的に通院していただく必要があります。その点、ダイレクトボンディングは短時間で治療が完了することが多いです。
治療後すぐに日常生活に戻れて微調整もできる
自然な色に仕上がり、目立ちにくいため、治療後に違和感なく日常に戻ることが可能です。仕上がり後に色味が気になった場合、再度の修正や治療も他の治療と比べて簡単に行えます。
他の治療に比べて安価な自費治療である
自費治療と聞くと高いイメージがありますが、矯正やセラミック治療より料金が高くありません。また、保険適用のレジンと違い、材料にセラミックが入っているため、審美性という点でも見劣りはしません。
金属を使用しないので体にやさしい
レジンという材料は、金属を使用していないため、金属アレルギーの方でも安心して治療ができます。唾液で溶けてイオン化し体内に蓄積しない材料であるから、体に優しい治療法です。
すきっ歯が気になるけれど、矯正治療のように長期間かけたくない方や、費用を抑えたい方に適した治療法といえます。
すきっ歯をダイレクトボンディング治療するメリット・デメリット
ネット上に自力ですきっ歯は治療できると謳うものがありますが、歯の破折や他の部分に隙間が空くなどのリスクが高いためやめておきましょう。ダイレクトボンディングは手軽にすきっ歯を改善できる治療法ですが、メリット・デメリットがもちろんあります。理解したうえで選ぶことが大切です。
メリット
- 1回の通院で治療が完了することが多く、矯正治療のように数ヶ月~数年かかることがない
- 歯をほとんど削らずにすむため、なるべく歯を残したい人におすすめである
- 費用が他の自費治療と比べて比較的安い
デメリット
- レジンは経年劣化しやすい材料で、数年後に修理や交換が必要であり、耐久性にはやや欠ける
- プラスチックが含有されているため、コーヒーやタバコなどの影響を受けやすく、着色しやすい
- 噛み合わせが強い人は、固いものを食べると欠けることがある
このように短期間で気軽に治療できる反面、メンテナンスが必要になるため、ライフスタイルに合わせた選択が重要です。
ダイレクトボンディング以外のすきっ歯の治療法
すきっ歯の治療には、ダイレクトボンディング以外にもさまざまな治療法があります。
他の治療法との比較
手軽さを求めるならダイレクトボンディング、長期的な耐久性を求めるなら歯列矯正、ラミネートべニアやセラミック治療が適しています。
まとめ
すきっ歯のダイレクトボンディングは、「短期間・低コスト・歯を削らない」というメリットがあり、多くの人にとって魅力的な治療法です。ただし、耐久性や着色のリスクもあるため、定期的なメンテナンスを心がけることが大切です。自分に最適な治療法を選ぶために、歯科医と相談しながらしっかり検討しましょう。