歯石取りの必要性を歯科医院で言われても、あまりお口の健康に興味のない方はぴんと来ないかもしれません。歯石取りとはどのようなものか、歯石取りの方法、放置した際のリスクについて詳しくご紹介いたします。
歯石取りとは
歯石取りとは、歯に付着した硬い汚れ(歯石)を取り除く処置のことです。では、そもそも歯石とはどのようなものでしょうか。
歯石とは
歯垢(プラーク)が石のように硬くなったもので、細菌や唾液に含有するカルシウムと結合して、2日程経つと石灰化します。歯石の中には細菌の死骸も含まれているため、内毒素があります。歯石になってしまうと、歯周ポケットや歯茎に沈着してしまいます。歯ブラシでは除去できず、歯科医院での処置が必要となります。
歯石取りの目的
歯石があると見た目が気になってしまうという理由のみではありません。歯石取りをする目的についてご案内します。
- 歯周病や虫歯の予防
- 口臭の改善
- 歯の健康を守る
- 歯の黄ばみを改善する
歯周病や虫歯の予防
細菌の温床を除去して、細菌感染による虫歯や歯周病を防いでおきます。歯周病は、日本人の8割がかかっていて、Silent Diseaseと呼ばれるほど、初期段階に自覚症状がありません。
口臭の改善
歯石には悪臭の原因菌が含まれ、除去して口臭をなくします。連鎖球菌などの原因菌は悪臭を発生させるため、それらを除去して口臭の改善につながります。
歯の健康を守る
歯石があると歯に細菌や食べかすが引っ掛かりやすいです。歯を長持ちさせることが難しいため、除去して歯や歯茎の健康を守ります。
歯が黄ばみやすくなるのを防ぐ
歯石の表面は着色汚れを吸着しやすいため、歯が黄ばんで見えることがあります。歯石を取り除くことで、自然な患者さんご自身の歯の色を取り戻す効果も期待できます。
歯石取りの方法と流れ(歯科医院での施術)
健康な歯を維持するためには、定期的な歯石取りが必要です。歯科医院での歯石取りは、大きく分けてスケーリングとルートプレーニングの2種類があります。
スケーリング(Tooth scaling)
歯の表面に付着した歯石や歯垢の除去を行います。歯肉縁上歯石(しにくえんんじょうしせき)と呼ばれる歯肉より上の部分に堆積した歯石や歯垢が対象です。医院の専門器具であるスケーラーを使用します。
ルートプレーニング(Root planing)
スケーリング後に、歯周ポケット内の歯石を除去します。歯茎の奥深くや歯周ポケットに入り込んだ歯石を除去し、汚染されたセメント質や象牙質があればそれも取り除きます。歯根(ルート)を平ら(プレーニング)にするので、重度の歯周病がある場合に行います。数回に分けて施術することもあります。
歯石取りの流れ
歯の状態をレントゲンなどで確認し、歯周ポケットの深さの測定をします。超音波による微かな振動を起こす超音波スケーラーで歯石を砕いて分解して清掃します。かぎ針のような形状である手用スケーラーで細かい歯石を取り除きます。仕上げに研磨(ポリッシング)を行い、歯の表面を滑らかにします。
歯石が付きやすい人の特徴は?
歯石が付きやすい人は、歯磨きの不十分さ以外に、唾液、全身疾患や嗜好品に関係する場合があります。
歯磨きが不十分な人
- 毎食後にブラッシングを行っていない
- 歯ブラシのみでのブラッシングをし、タフトブラシやデンタルフロス、歯間ブラシなど併用していない
唾液が関係する人
- 唾液の性質がサラサラとしていてアルカリ性に傾いている
- 唾液の分泌量が多い
疾患や嗜好品など
- 糖尿病にかかっていたり、免疫力が低下している
- 喫煙や飲酒が好きで、日常的に習慣にしている
- 甘い食べ物をよく食べている
歯並びが悪いと、歯並びが綺麗な人より、歯石が溜まりやすいです。
歯石を放置するリスク
歯石を放置すると、口の中でさまざまなトラブルを引き起こします。
① 歯周病や虫歯の原因になる
歯石の表面はザラザラしており、沈着すると歯茎が腫れたり、細菌が繁殖しやすい環境になっています。出血が起きる歯肉炎に対処しなければ、歯がぐらつく歯周炎となり、更に進行すると、歯槽膿漏という重度の状態になります。虫歯は酸により溶けると白濁後、黒や茶色に変色して穴が開き、象牙質や神経(歯髄)に達すると、自覚症状が出ます。その段階で歯科医院へ通院すると残念ながら重度で何度も通院する処置が必要という方が多いです。
② 口臭の原因になる
歯石の中には、細菌の死骸や食べかすが詰まっているため、唾液などが入ると腐敗が進み口臭の原因になります。毎日歯を磨いているけれど、口臭が気になるという人は、お口の中の見えにくい部分に歯石が溜まっているかもしれません。
日本人の歯を失う理由、第一位が歯周病です。先述しましたが、日本人の8割がかかっているといわれる歯周病です。対処せず放置していると、歯を支える歯肉や骨が痩せてしまい、歯が抜けてしまうという状態になります。天然歯を失えば、咀嚼や会話、見た目という機能や審美面に影響が出るため、義歯治療を行わなければなりません。
歯石取りでなぜ痛い?
歯石取りは痛いものというイメージがある人がおられます。痛みの感じ方には個人差がありますが、歯石取りが痛いという原因は下記の通りです。
歯石取りが痛いと感じる原因
- 歯石が大量に溜まっているため、取り除く際に超音波スケーラーの振動が強く響くことがある
- 歯茎に炎症が見られ、出血しやすく歯石取りでしみることがある
- 知覚過敏があるため、超音波の振動が刺激になることもある
痛みを抑える方法
では、どのようにすれば痛みを抑えて歯石取りをすることができるでしょうか。
定期検診を受けよう
こまめに定期検診を受けて、クリーニング(歯石取り)を行ってもらいましょう。痛みが苦手な場合は希望すれば局所麻酔が使える可能性があるため、相談してみてください。施術前に痛かったら手を挙げるなどの意思表示の仕方を確認しておきましょう。
1年以上歯石取りをしなければ、歯石が多く溜まるためどうしても痛みが出やすくなるため、「痛いから歯医者に行かない」ではなく、「痛くなる前に歯石を取る」ようにしましょう。
歯石を防ぐためのセルフケア
歯石を予防するためにはそもそも歯石をつくらないことです。予防のためには毎日のケアが重要です。
正しい歯磨きを徹底する
歯と歯茎の境目や、歯と歯の間を意識して磨きましょう。歯ブラシの毛先を45度の角度で当てると効果的です。歯間に溜まりやすい食べかすやプラークをデンタルフロスやタフトブラシ、歯間ブラシで除去しましょう。就寝中は唾液の分泌が減ってしまうため、毎日1回寝る前に使用するのが理想です。
食生活を見直す
細菌は食べ物の糖分を餌に酸を排出するため、砂糖が多く含まれる飲食物を控えましょう。スポーツドリンクは体に良さそうですが、糖分は多く含まれています。食後30分以内に歯を磨く習慣をつけておくと良いでしょう。
まとめ
歯石取りという時間は何をすると疑問に思っていた方も、その重要性や具体的な方法を知ることで、不安が解消されたのではないでしょうか。歯石は歯ブラシでは取れないもので、歯科医院でのスケーリングにより痛みを最小限にして除去可能です。放置すると歯周病や口臭の原因になるため、定期的な歯石取りとセルフケアで、歯の健康を守ることができます。歯医者は痛くなってから行く場所ではなく、健康な歯を維持するために定期的に通院する場所であると認識し、定期的な歯科検診を習慣にしましょう。