抜歯後の傷を速やかに治癒させるためには、抜歯後の歯磨きなどのケアを正しく行う必要があります。もしケアの仕方を間違うと、感染症のリスクが高まったり、治癒が遅れたりすることがあります。抜歯後の正しい歯磨きについてご説明します。
抜歯直後の口腔ケア
抜歯後の最初の24時間は特にケアに注意が必要です。この時期には、傷口の治癒を助け、感染を防ぐために、以下のような点に気を付けましょう。
1. 出血を最小限に抑える
抜歯後1時間程度、ガーゼを傷口に押し当てて噛むことで止血を行います。出血が止まらない場合は新しいガーゼを湿らせて何度か繰り返します。
2. 冷却療法
腫れを抑えるために、頬の外側から冷やすことが効果的です。氷のうや保冷材などの冷たいパックを使って、抜歯した側の頬を冷やしましょう。
3. 痛みがある場合
処方された薬を服用しましょう。
4. うがいをし過ぎない
出血が気持ち悪くてうがいをしたくなる場合は、出来るだけ軽く行い、血の塊がはがれないように気を付けましょう。
5. 抜歯後の穴を触らない
抜歯後の歯茎は刺激に対してとても敏感になっていますので、舌や指で触らないようにしましょう。気になると思いますが、我慢しましょう。
6. 柔らかい食べ物を摂取する
抜歯した部分に硬い食べ物が当たると出血を起こすことがあるため、出来るだけ柔らかい食事を用意しましょう。
7. 処方された薬は指示通りに飲む
抜歯後は歯科医院から抗生物質や痛み止めを処方されます。痛みのない場合は痛み止めを飲む必要はありませんが、抗生物質は必ず服むようにしましょう。
8. 唇の乾燥
処置の最中に唇が乾燥して、その後も乾燥が続く場合は、リップクリーム等で保湿しましょう。
9. 水分補給を行う
抜歯後は口内が乾燥しやすくなりますので、水分補給をこまめに行いましょう。適切な水分補給は、口内環境を清潔に保つだけでなく、全身の血液循環を促進し、傷の治癒を助けます。アルコールやカフェインの多い飲料は避け、水やハーブティーなどを積極的に摂取しましょう。
ただし、傷口を洗い流してしまわないように気を付けましょう。
抜歯後の歯磨き方法
抜歯後の歯磨きは、通常の方法と異なる点がいくつかあります。非常にソフトな歯ブラシを使用し、以下のステップで慎重に磨きましょう。
1. やわらかい歯ブラシの選択
抜歯後は歯茎が敏感になっているため、柔らかい毛の歯ブラシを使用することが大切です。また、抜歯部位を刺激しないように、軽い力で磨くことが重要です
2. 小さめのヘッドが使いやすい
小さめのヘッドの歯ブラシを使うことで、細かい部分や抜歯部位周辺を無理なく清掃できます。
3. 優しく磨く
傷口の周囲は避けて、他の部分は軽くブラシを動かしましょう。
4. 歯磨き後のうがい
抜歯後は強いうがいは厳禁です。少量の水をお口の中にいきわたらせて、そっと水を吐き出しましょう。
5. マウスウォッシュの使用
市販されている口腔洗浄液を使用すると、口内を清潔に保ち、細菌感染のリスクを減らすことに繋がります。ドラッグストアでは様々な種類のマウスウォッシュが販売されていますが、アルコール含有量が高い製品は避け、刺激が少なく傷口に優しいタイプを選びましょう。
抜歯後のケアに使用する歯磨き剤とその選び方
抜歯後は歯磨き剤を使っていいの?
歯磨き粉は使っても大丈夫です。ただ、抜歯した部位に歯ブラシが当たらないようにして、強いうがいを行わない方が良いため、最後に水をそっと吐き出すことを注意しましょう。
数日間は、抜歯した部位を出来るだけ刺激しないような方法で歯磨きを行いましょう。
歯磨き粉の選び方
研磨剤不使用の歯磨き粉が最適
抜歯後の傷口は非常にデリケートなため、研磨剤が含まれていない歯磨き粉を使用することで、刺激を最小限に抑えることができます。
抗菌成分を含む歯磨き粉が役立つ
抗菌成分を含む歯磨き粉を使用することで、感染リスクを減らし、口内の清潔を保つことが可能です。
食事と歯磨きの関係
抜歯後は食事内容も重要です。抜歯から数日間は抜歯した部位で噛まないように気を付けながら、柔らかくて栄養価の高い食事を心掛けましょう。
食後の歯磨き
食後30分を過ぎたら、優しく歯を磨きましょう。抜歯後の穴に食べ物が詰まりやすくなっていますが、舌や指であまり触らないようにしましょう。抜歯後数日間は強いうがいは厳禁です。穴に入ってしまった食べ物のカスは、そのまま放置しても知らない間に取れていることが多いです。
セルフケアとプロケア
抜歯後の回復の状況を見てもらうためにも、定期的に歯科健診を受けましょう。抜歯後数日間は、抜歯した部分の傷が気になって他の歯も磨きにくい状態だと思います。虫歯や歯周病にならないように、セルフケアとプロケアの両輪でお口の中を清潔に保ちましょう。
抜歯後の穴に食べ物が詰まったときはどうする?
食べ物のカスが、歯を抜いたときにできる穴(抜歯窩)に詰まることがあります。その際に、指で取ろうとしたり、つまようじで掻きだして取ろうとしたりするのは避けましょう。歯ブラシで取ろうとするのも同様です。
指についている雑菌、つまようじや歯ブラシの刺激によって、化膿する恐れがあります。穴は内側から徐々に傷が癒えていくため、食べ物のカスが閉じ込められた状態で傷口はふさがりません。放置するのが最適ですが、どうしても気になる場合は、優しくうがいをして取り除きましょう。
抜歯後のケアと喫煙との関係
喫煙は抜歯後の傷の治りを遅らせる原因の一つとなります。タバコの煙に含まれる有害物質は血液循環を悪化させ、傷口の治癒過程を妨げます。
タバコに含まれる有害物質と身体への影響
- ニコチン・・血管を収縮させて血液の流れを悪くするため、傷が治りにくくなります。
- タール・・多くの発がん性物質を含んでいます。
- 一酸化炭素:組織への酸素の運搬を妨げて歯茎が酸欠状態になって、免疫力が低下することで感染が起こりやすくなります。
喫煙によって傷が治りにくくなるため、抜歯後は、できるだけ喫煙を控えるようにしましょう。禁煙は一時的なものでなく、長期的な健康のためにも継続することが望ましいです。
まとめ
抜歯後は、歯茎の傷を安静に保ち、強いうがいをしないように心がけることが大切です。歯磨きの際は、歯ブラシが傷口に触れないように気を付けながら、最後に水で流す時もそっと行います。傷口が落ち着くまでは、やわらかくて栄養価の高い食べ物を摂取するようにして、回復を促しましょう。