詰め物と被せ物は、虫歯などで損傷があった歯を修復し、歯の見た目と機能を改善するための歯科治療です。しかし、中には詰め物・被せ物が外れやすい方がおられますので、その原因と対策についてご説明します。
目次
詰め物・被せ物が外れる主な理由
詰め物や被せ物が外れやすくなる原因は様々です。主な理由としては、治療する歯自体が弱かったり、使用される材料の種類や施術後のメンテナンスが不十分な場合があります。これらの要因が複合的に影響し、最終的には治療した詰め物や被せ物の寿命に差が出ることがあります。
1. 接着剤の劣化
- 詰め物や被せ物は接着剤で歯に固定されますが、時間の経過とともにこの接着剤が劣化することがあります。
- 唾液や食べ物の酸性成分、温度変化などが接着剤の劣化を促進します。
2. 虫歯の再発
- 詰め物や被せ物をした歯の下で虫歯が再発すると、歯の構造が弱まり、固定が不十分になることがあります。
- 虫歯が進行すると詰め物や被せ物が浮き上がり、最終的に外れてしまうことがあります。
3. 歯の摩耗や破損
- 詰め物や被せ物が装着された歯が摩耗したり破損すると、固定が弱くなります。
- 特に硬いものを噛む習慣がある場合、詰め物や被せ物が外れやすくなります。
4. 接着不良
- 最初に詰め物や被せ物を装着する際に、適切に接着されなかった場合、時間とともに外れることがあります。
- 湿度や歯の表面の清掃状態、使用する接着剤の質などが影響します。
5. 噛み合わせの問題
- 噛み合わせ(咬合)が正しくない場合、特定の歯に過度な圧力がかかることがあります。
- この圧力が詰め物や被せ物に影響を与え、外れる原因となることがあります。
6. 歯周病
- 歯周病によって歯の支持組織が弱まると、歯自体が動揺しやすくなります。
- これにより詰め物や被せ物が外れることがあります。
7. 材料の劣化
詰め物や被せ物の材料自体が経年劣化することがあります。特にレジンや金属などの材料は、長期間の使用によって劣化し、強度が低下することがあります。
詰め物・被せ物の材料の種類と耐久性
詰め物や被せ物に使用される材料には、金属、セラミック、コンポジットレジンなどがあります。それぞれの材料は特性が異なり、耐久性や審美性、費用に大きな違いがあります。
たとえば、金属は耐久性が高いですが、色が目立つため審美性に欠けることがあります。一方、セラミックは自然な歯の色に近く、審美性に優れていますが、コストが高くなりがちです。
1. 銀合金(銀歯)
- 耐久性・・劣化しやすい。表面に小さな傷が出来やすい、
- 特徴・・耐摩耗性が高く、噛み合わせの強い奥歯に適している。表面に汚れがたまりやすい。審美性は低いが、保険適用で治療費が安い。
2. セラミック
- 耐久性・・高い。正しく装着されれば10年以上持続可能。
- 特徴・・天然歯とほぼ同じ色と質感で作れるため、審美性が非常に高い。金属に比べて割れやすい。
3. コンポジットレジン
- 耐久性・・中程度。通常は5年から7年程度。
- 特徴・・自然な歯の色に調整可能で、審美性が高い。色が変色しやすく、時間が経つと摩耗することがある。表面に汚れが付きやすい。
4. ゴールド(金)
- 耐久性・・非常に高い。正しく管理されれば20年以上持続することもある。
- 特徴・・非常に頑丈で、歯への適合性が良い。金属アレルギーが起こりにくい。審美的には金色が見えるため、目立つことがある。
5. セラミック
- 耐久性・・約10年。適切なケアをすればより長持ちする。
- 特徴・・審美性が非常に高く、自然な見た目が得られる。しかし、硬いものを噛むと割れるリスクがある。
6. ジルコニア
- 耐久性・・非常に高い。セラミックの中でも特に強度が高い。
- 特徴・・審美性と強度を兼ね備え、自然な見た目でアレルギー反応も少ない。
これらの材料はそれぞれにメリットとデメリットがあり、患者さんのニーズや歯の状態、費用を考えて選択する必要があります。
詰め物・被せ物が取れやすい人の日常生活での注意点
食生活などの習慣が詰め物や被せ物にも影響を及ぼします。硬い食べ物を好んで噛む習慣や、歯を無意識に食いしばる癖(ブラキシズム)があると、詰め物や被せ物に大きな力が加わり、外れやすくなります。
また、歯磨きやフロスの使用を怠ると、歯周病のリスクが高まり、歯がグラグラしだすことで詰め物や被せ物の寿命を短くする原因となります。
詰め物や被せ物が取れやすい人が日常生活で注意すべき主なポイントは以下のようなものです。
1. 硬い食べ物を避ける
硬いナッツやキャンディ、氷などを、噛み砕く癖がある人は、詰め物や被せ物に過度の力が加わる食べ物は避けるようにしましょう。
2. 食べ物を均等に噛む
片側の歯だけで食べる習慣は避け、両側の歯を均等に使って噛むよう心掛けましょう。
3. 歯ぎしり・くいしばりの防止
無意識の歯ぎしりや食いしばりは、詰め物や被せ物に損傷を与える原因となります。必要であれば、就寝中にマウスピースを使用しましょう。
4. 定期的な歯科健診の受診
定期的なチェックで早期に問題を発見し、詰め物・被せ物の調整や修復を行いましょう。
5. 適切な口内衛生の維持
- 正しいやり方で歯磨きを行い、詰め物や被せ物周辺にたまった歯垢をしっかりと除去しましょう。
- フロスを使うことを習慣づけ、特に詰め物や被せ物の隙間に食べ物が詰まらないよう注意しましょう。
6. 酸性の食べ物や飲み物の摂取を控える
酸性の高い食品や飲料は、歯を溶かす原因となり、詰め物や被せ物の隙間から歯を傷めることがあるため、過度の摂取は避けるようにしましょう。
7. 禁煙または減煙
喫煙は歯茎の血流を悪くし、詰め物や被せ物の基盤となる歯の健康に悪影響を及ぼしますので、禁煙するか本数を減らしましょう。
これらの注意点を守ることが、詰め物や被せ物の寿命を延ばし、その機能性を長く維持することに繋がります。
歯ぎしり、食いしばりが歯の詰め物・被せ物に与える影響
歯ぎしりや食いしばり(医学用語では「ブラキシズム」と呼ばれます)は、歯の詰め物や被せ物に影響を与えることがあります。これらの習慣が詰め物や被せ物に与える影響についてご説明します。
1. 強い力による物理的な損傷
歯ぎしりや食いしばりは、通常の食事の咀嚼時に起こる力を大幅に超えた力を歯に加えます。これにより、詰め物や被せ物が割れたり、壊れることで外れてしまうリスクが高まります。
2. 接着材の劣化
強い力が持続的にかかることによって、詰め物や被せ物を固定している接着材に負担をかけます。接着材が劣化すると、詰め物や被せ物が緩んでしまい、外れやすくなる可能性があります。
3. 歯の損傷による
強い力が繰り返し加わることで、詰め物や被せ物の下にある本来の歯も損傷を受けることがあります。歯の根にひびが入ったり割れたりすると、将来的にさらなる歯科治療が必要になることもあります。
4. 歯茎への影響
詰め物・被せ物に強い力が加わると、歯茎への負担となり、歯茎の炎症や後退を引き起こすことがあります。これにより、詰め物や被せ物の固定が弱まる可能性があります。
5. 歯の移動や噛み合わせの変化
長期にわたる歯ぎしりや食いしばりは、歯の位置の微妙な変化を引き起こすことがあります。特に歯ぎしりによって歯が揺れると、歯が移動しやすくなります。
これにより、詰め物や被せ物のフィット感が悪くなり、咬み合わせが悪くなることがあります。
歯ぎしりや食いしばりによる歯への影響を緩和するための対策
ナイトガードを使用する
歯ぎしりや食いしばりから歯を守るために良く行われるのは、就寝中にマウスガードやナイトガードと呼ばれるマウスピースを装着することです。
これにより、歯と詰め物・被せ物への圧力が分散され、歯を痛めるリスクが低減されます。
リラクゼーションの方法を実行する
歯ぎしり・食いしばりの原因の一つにストレスがあげられます。ストレスを緩和するためには、リラクゼーション技術(瞑想、ヨガ、深呼吸など)を学んで実行することが役立ちます。
定期的に歯科健診を受ける
歯ぎしり・食いしばりがあると、特定の歯に強い力がかかってエナメル質がすり減ったり、歯を傷めることがあります。定期健診で早期に問題を発見し、必要な治療を行うことが重要です。
定期的なメンテナンスの重要性
詰め物や被せ物の寿命を延ばすためには、定期的な歯科健診が不可欠です。患者さんのお口の状態によって定期健診の頻度は変わりますので、担当の歯科医師または歯科衛生士が指示するスケジュールで受けるようにしましょう。
当院では3ヶ月に一度程度で受けていただく場合が多く、歯周病治療が必要な場合は1~2ヶ月の間隔での受診をお勧めする場合があります。
まとめ
詰め物・被せ物が外れるのを防ぐためには、適切な材料の選択、精密な型取りと製作、日常生活での注意、そして定期健診を受けることが重要です。これらを意識し、毎日の歯磨きを正しい方法で行うことで、詰め物・被せ物はより長く機能を維持することができます。