歯は外側から、エナメル質、象牙質、歯髄(神経)で出来ています。
一番外側のエナメル質は非常に硬く、少し傷ついても唾液の力で修復することが出来ます(再石灰化)が、神経がないため痛みを感じることはありません。
エナメル質の内側にあるのが象牙質という組織です。象牙質には象牙細管という細い管が集まっており、象牙質が刺激を受けると象牙細管を通して刺激が伝わり痛みを感じる他、神経が直接刺激を受けたり炎症が起きると痛みを感じます。
損傷が象牙質に留まらず、神経にまで達すると耐え難い痛みが生じることになります。
損傷を受けた組織は炎症を起こし、痛みや熱、腫れなどの症状が現れます。
虫歯はミュータンス菌などの虫歯原因菌による感染症のひとつで、虫歯原因菌が出す酸により歯が溶かされ、穴が開いてしまう病気です。
ミュータンス菌は砂糖を栄養源としてプラークを形成します。そしてプラークの中で酸を作り出し、その酸が歯を溶かします(脱灰)。穴が開いてしまうといわゆる虫歯になります。
虫歯は自覚症状が出にくいのが特徴ですが、進行してくると熱いものや冷たいものがしみたり、痛みが持続するなどの症状が出てきて、そのまま放置するとやがて神経や血管にまで菌が侵入したり、歯の根に炎症が起きて膿が溜まり、耐え難い痛みが出ることもあります。
症状によっては、歯茎の腫れだけにとどまらず、顔の腫れや発熱が起こることもあります。
一度虫歯になり治療した部分が再度虫歯になってしまうことを二次虫歯(二次カリエス)といいます。
二次虫歯は、詰め物や被せ物と歯の間に出来た隙間に虫歯菌が入り込んでしまうことで発生します。過去の治療で神経を抜いてしまっている場合は、痛みを感じることがなく、また、詰め物や被せ物の下で虫歯が進行するため自分では気付かないことが多く、重症化する恐れがあります。
虫歯が歯の根に達している場合は根管治療を行います。
根管内を清掃し、消毒します。無菌状態になったら薬剤を充填し、新たに菌が侵入するのを防止します。
虫歯が象牙質まで進行している段階で、冷たいものや甘いものがしみる症状が現れます。歯質の欠損が大きくなるため、多くの患者さんがこの段階で虫歯に気付きます。
大きな虫歯には充填治療が難しいため、虫歯部分を削り取って詰め物(インレー)をいれるインレー治療を行います。
虫歯が神経に到達し、侵食している段階です。強い痛みが現れ、多くの患者さんが痛みに耐えかねて歯科医院を受診します。
この段階になると虫歯が神経に達しているため、神経を取って被せ物をする治療を行います。
神経が完全に侵されているため、痛みは感じられません。歯冠部がほぼ崩壊しており、歯根だけが残っている状態になります。
治療によって元の状態に戻すことは困難で抜歯になるケースがほとんどです。
抜歯後の治療には、入れ歯・ブリッジ・インプラントなどの選択肢があります。
知覚過敏とは、虫歯ではないのに冷たいものや甘いものを食べた時、風があたった時や歯みがきをした時に歯がしみたり痛みを感じる症状のことです。痛みは一過性であることが特徴で、虫歯などの病変がない場合に見られる症状のことを指します。
なぜ知覚過敏が起こるかというと、歯の表面が傷ついたりすり減ったりして象牙質がむき出しになり、外部からの刺激が神経に伝わりやすくなること、また、加齢などにより歯茎が後退し(歯肉退縮)、象牙質が露出することで知覚過敏になることもあります。
虫歯 | 知覚過敏 | |
---|---|---|
痛みが続く時間 | 数分間続く こともある |
一瞬だけ |
痛みの増加具合 | 時間と共に 増加する |
ほとんど 増加しない |
しみる歯を 叩いた場合 |
響くような 鋭い痛み |
痛みはない |
歯の見た目 | 茶色〜黒色に 変色し、 穴が開いている |
表面はきれいだが、 根元が露出して 歯が長く見える |
知覚過敏はセルフケアによって症状を軽減出来る場合もありますが、改善されない場合は歯科医院での治療が必要となります。
硝酸カリウムや乳酸アルミニウムが配合されている知覚過敏用の歯磨き粉は、歯がしみたり痛んだりする神経の過敏性を抑える成分を含んでいるので、これらを使用することで知覚過敏の症状を軽減することが出来ます。
硬い歯ブラシや強い力でのブラッシングは歯のエナメル質や歯肉を傷つけてしまい、知覚過敏を悪化させてしまいます。
柔らかい歯ブラシを使用し、優しく磨きましょう。
炭酸飲料・スポーツドリンク・柑橘類などの酸性の強い飲み物や食べ物は、歯のエナメル質を溶かす原因となるため、これらを口にした後は水で口をゆすぐようにしたり、摂取を控えることで知覚過敏の悪化を防ぐことが出来ます。
薬剤の塗布やコーティング剤をすり減った部分に塗り、象牙質を覆うことで外部からの刺激が伝わることを防ぎます。
すり減ってしまった箇所にプラスチックの樹脂を詰めるなどして露出してしまった象牙質を覆います。
歯の見えている部分が割れたり欠けたりすることを歯冠破折、歯茎に埋まっている部分の破折を歯根破折といいます。
意外にも破折は歯周病と虫歯に続いて歯を失う原因の第3位となっており、神経を取り除いたりして歯質が劣化しているところに食いしばりや歯ぎしりで強い力が加わることで発生することが多い疾患です。
神経を抜いた歯が破折した場合は痛みを感じにくいため、発見が遅れることがあります。歯茎が赤く腫れたり膿が出るほか、噛むと違和感があるなどの症状が出るのが特徴です。
歯の割れ目から細菌が入り込み、上記のような初期症状を経て、硬いものを食べると痛む・歯肉が腫れたり膿が出るなどの症状が出るようになります。
歯根破折の場合は割れたところが浅い場合と深い場合で治療法が異なります。
深い位置で割れた場合は抜歯になる可能性が高く、抜歯後は入れ歯・インプラント・ブリッジなどの治療を行います。
永久歯を失ったところに人工歯根(インプラント体)を埋め込み、その上に人工歯をかぶせる治療法です。
永久歯を失ったところの周囲に金属のバネ(クラスプ)をつけて人工歯を固定します。取り外しが可能です。
失った永久歯の両隣の歯を土台にして人工歯を支える方法をブリッジといいます。
割れた位置が浅かった場合は抜歯せずにすむことがあります。
歯茎を下げて歯を露出させて被せ物をする
クラウンレンクスニング(歯根延長術)
割れて残った歯を引っ張りあげて露出させる
エクストルージョン(歯牙挺出術)
歯と骨の間には歯根膜がありますが、食いしばりや歯ぎしりなどの癖があると歯根膜に炎症が起き、歯茎に痛みや腫れが生じることがあります。また、食いしばりや歯ぎしりで歯が削れることにより痛みが起きている可能性もあります。
マウスピースを使用します。
就寝時にマウスピースを装着することで歯や顎への負担を軽減することが出来ます。
根尖性歯周炎の場合は、原因は歯茎ではなく歯にあります。
神経が壊死したまま放置すると、歯の根に炎症が起き、膿が溜まり、根尖性歯周炎を引き起こすことがあります。
根の先の歯茎が腫れるほか、普段から噛むと痛かったり、膿が出たりという症状が出ます。さらに進行すると根に膿が溜まり腫れ、ここまで進行すると我慢出来ない程の痛みを感じることがあります。放置すると副鼻腔炎や顔の腫れを引き起こすこともあります。
そして症状が進行すると最終的には歯が抜け落ちてしまいます。
歯根に溜まっている膿みを出し、清掃・消毒をします。無菌状態になったら薬剤を充填し、詰め物・被せ物を取り付けます。
根尖性歯周炎は放置していても自然に治ることはなく、症状が進行すると抜歯に至る恐れがあります。
症状がみられたら出来るだけ早く歯医者を受診するようにしましょう。